記事のポイント
- 野心的な脱炭素目標の達成に向けて、社内炭素価格を引き上げる企業が相次ぐ
- 帝人はトン当たり50ユーロを100ユーロに、大和ハウスは2万円に上げた
- 世界各国の炭素税の税率引き上げや排出量取引価格の上昇が背景にある
野心的な脱炭素目標の達成に向けて、社内炭素価格(インターナルカーボンプライシング、ICP)を引き上げる企業が相次ぐ。帝人は4月からトン当たり50ユーロだった価格を100ユーロに引き上げた。大和ハウス工業は不動産投資の投資判断基準にICPを導入、価格は従来比5倍のトン当たり2万円とした。背景には、世界各国が導入する炭素税の税率引き上げ、欧州の排出量取引価格の上昇などがある。(オルタナS編集長=池田 真隆)
帝人は4月3日、ICP制度の改訂を発表した。同社が2021年1月に導入を始めたICPの価格をトン当たり50ユーロから100ユーロに引き上げた。
環境省が2023年3月に公開した「インターナルカーボンプライシング活用ガイドライン」によると、2020年に企業が開示したICP価格の中央値はトン当たり25米ドル(3359円、2023年4月25日時点)だった。2020年時点で世界でICPを導入した企業853社を調べた。

帝人の制度改定の狙いは、サプライチェーン全体の排出量を指すスコープ3の削減だ。特にスコープ3のカテゴリー1(原材料の調達)が排出量の半数を占める。同社の2021年度のCO2排出量は5.07百万トンだが、このうち、カテゴリー1は2.56百万トンだ。
ICPの適用範囲を、これまでのスコープ1,2から、スコープ1~3まで拡大した。他社から調達する原材料をリサイクル材やバイオマス由来原料などに切り替えるための設備投資に対してもICPを適用していく。
同社は2050年にカーボン実質ゼロを長期目標に掲げる。外部環境の変化などを踏まえて、定期的にICPの見直しを行うという。
■欧州の排出量取引価格はトン当たり100ユーロを突破へ
世界各国では炭素税の税率の引き上げ、欧州では排出量取引価格の上昇が加速する。今年2月、欧州の排出量取引価格は初めてトン当たり100ユーロを超えた。2005年から排出量取引制度を始めて以来、初のことだ。