記事のポイント
- 30年代の実用化を目指し関連技術に投資する脱炭素ファンドが国内外で相次ぐ
- 「脱炭素」への投資拡大は世界的潮流だが、投資する側の「哲学」も問われる
- サステナブルファイナンスを健全に機能させるには、「Whyを問え」と専門家
環境や社会課題の解決を目指す「サステナブルファイナンス」の一つである「脱炭素ファンド」の立ち上げが国内外で相次ぐ。米ゴールドマン・サックスは1月に約16億米ドル(約2100億円)のファンドを立ち上げ、国内では三菱商事が三菱UFJ銀行などと国内最大規模となる約10億米ドル(約1350億円)のファンドを立ち上げた。脱炭素関連技術への投資拡大は世界的な潮流になったが、投資する側だけでなく、仲介者にも評価機関にも、受け手にも「知見と哲学」が問われる。(オルタナS編集長=池田 真隆)
三菱商事は5月2日、三菱UFJ銀行などと「丸の内クライメート・テック・グロース・ファンド」の立ち上げを発表した。複数の投資家から出資を募り、浮体式洋上風力発電や再生航空燃料(SAF)関連の技術を持つ海外のスタートアップなどに投資する。規模は2024年までに10億米ドルを目指す。
脱炭素関連技術への投資拡大は世界的な潮流だ。日本政府もGX(グリーン・トランスフォーメーション)政策を打ち出し、脱炭素と経済成長の両立を図る。政府はあらゆる産業のGX化を実現するためには、今後10年で150兆円規模の投資が必要だと試算した。
この投資を民間から集めるための呼び水として、経産省は2023年度から10年間で約20兆円規模の国債「GX経済移行債」を発行する。国債は、石炭火力発電の燃料などに使う水素・アンモニアの供給網の拡大や炭素固定技術などに充てる。
国内の大手金融機関も動く。みずほフィナンシャルグループは4月2日、2019年度から2030年度までのサステナブルファイナンスの実行目標を25兆円から100兆円に引き上げると発表した。その内、気候変動に対応したファイナンスの実行目標は12兆円から50兆円に引き上げた。
金融機関が脱炭素技術への投融資を強化する流れに合わせて、経産省はルールメイキングを急ぐ。気候変動対策の新たな評価指標に「削減貢献量」を組み入れ、金融機関からのファイナンスを得やすくする仕組みづくりを目指す。
■サスファイ人材には「社会を熟考する哲学・思考力」を
このように「脱炭素」を軸にサステナブルファイナンスは過渡期にあるが、健全な形で市場を機能させるには、投資する側の「哲学」が重要だ――。
一般社団法人鎌倉サステナビリティ研究所はこのほど、金融関係者らを調査したレポートを発行した。サステナブルファイナンス市場を健全に機能させるには、関係者にはどのような役割・能力が必要なのかを調べた。