記事のポイント
- 「SDGs」という言葉の認知率は86.0%に達した
- SDGsウォッシュは「社会からの貴重なフィードバック」である
- この視点をもって社内浸透の方向性や情報発信の重要性を捉えることが重要だ
「SDGsウォッシュ」は、単に社会からの批判ではなく、「社会からの貴重なフィードバック」という見方もできる。こうした視点に立てば、SDGsの定めているパートナーシップの重要性や社内浸透の方向性やサステナ経営の情報発信の姿が見えてくる。(高山 功平)

日経ESGの調査(2022年1月)によると、「SDGs」という言葉の認知率は86.0%に達した。「名探偵コナン」の認知度が74%、「坂本龍馬」の認知度が86%であることを考えると、改めてSDGsの認知度の高さが理解できる。
その一方で、GREEN NOTによるインターネット調査によると、「SDGs ウォッシュを知らない」と回答した人はわずか12%にとどまり、消費者のほとんどが、「SDGs」と「SDGsウォッシュ」を同時に認知していることが分かる。
企業がSDGsに取り組めば、同時にその取り組みが「ウォッシュ」かどうかのチェックを受けていることになりそうだ。
こんな話をするとSDGSウォッシュをリスクと感じ、実施することで指摘を受けるのではと取り組むこと自体にブレーキがかかったり、社内の慎重派がリスク管理の視点で「今は発信すべきではない」「少し様子を見よう」などと先送りされたりする。
まるでSDGsウォッシュがいけないものかのように取り扱われる。SDGsの取り組み自体が新しいことへの挑戦であるはずなのに、サステナ担当者は「ウォッシュになるな」との「くびき」をかけられる。そのため現場はますます委縮していき、思い切った活動ができなくなり、当たり障りのない内容に終わってしまう。
SDGsウォッシュに対する社会からの指摘は、リスクではなく、企業がよりよく成長するための社会からの機会提供であり、フィードバックと捉えるべきだろう。視点を変えれば、もっとこうして欲しいという応援のメッセージとして受けることもできよう。
誰でも最初は、何から始めてよいか分からない。ウソの仕組みを作り、わざわざアピールしようとは、考えていないはずだ。
無知なことから「これならSDGsに当てはまるかもしれない」という独自の判断や、これは環境に良い活動に違いないと取り組んだ結果が、ウォッシュになっていることがほとんどではないだろうか。
企業にとってサステナ推進やSDGsに取り組むうえでウォッシュと向き合うために必要なことは、下記の通り、3つあると考える。
1.「透明性」
自社の取り組みを適切に開示し続けること。都合の良い情報だけを出すのではなく、自社の取り組みの弱いところや課題も開示することが、かえって読者から信頼を得るのに役立つ
2. 「聴く力」と「改める力」
「SDGsウォッシュだ」の指摘があった場合、それを真摯に受け入れる姿勢を持ち続けること。指摘を「社会からのフィードバック」だと受け止め、至らない点を修正して改善し続けること。
3. 「連携力」
企業単独でサステナブルやSDGsに関する活動を推進するのではなく、専門的な知識を持ち、課題の当事者の声を知るNGO/NPOや大学、行政などと連携して進めること。
SDGsバースデーケーキモデルの頂点であるイチゴの位置、そして中心を貫くようにに「目標17パートナーシップで目標を達成しよう」が置かれているのも、連携することの重要性を示していると解釈できる。
まずは、実際の社会や地域に目を向けステークホルダーエンゲージメントについて見直し、対話の場を作り、信頼関係を築いて、連携を構築しながら活動を推進することを勧めたい。