記事のポイント
- 三菱UFJ FGが「東アフリカ原油パイプライン」への関与をはじめて否定
- みずほFG、三井住友FGを含む3メガバンクすべてが関与を否定したことに
- 支援中止を求める環境NGOらの「世論の声」が後押しに
三菱UFJフィナンシャルグループは6月2日、ウガンダとタンザニアで進む「東アフリカ原油パイプライン(EACOP)」に「関与していない」と答えた。国際環境NGO350.orgが明らかにした。これにより、邦銀3メガバンクすべてが同プロジェクトへの関与を否定したことになる。「個別案件についてはコメントせず」を繰り返してきた状況から一歩前進し、支援中止を求める市民の声がひとつ実を結んだ。(オルタナ副編集長・長濱慎)

■「異例の関心の高さ」を理由に公表
EACOP(イーコップ)はウガンダで採掘した原油を、タンザニアの港まで輸送するパイプライン建設プロジェクトで、2025年の完成を目指している。しかし、CO2排出量の増大や生態系破壊、水質汚染が懸念され、住民への人権侵害も起きている。
オルタナで報じた通り(2月23日、5月17日)、EACOPの中止を求める声は世界各地で上がっており、すでに世界40以上の金融機関が資金提供を行わないと表明した。邦銀については、みずほFG、三井住友FGに続き、今回の三菱UFJ FGの表明によって3メガバンクすべてが関与を否定したことになる。
三菱UFJ FGは、以下のコメントを発表した。
「基本的なポジションとして、案件に関与していない、もしくは案件への融資検討を取りやめた場合であっても、個別案件へのコメントは差し控えています。しかしながら、EACOP案件に対する関心が異例の高さとなっていることに鑑み、例外的な対応として、本件へのファイナンスに関与していないことをお知らせします」
国際環境NGO350.orgの伊与田昌慶チームリーダー代行は「案件に対する関心が異例の高さとなっていることに鑑み、例外的な対応として」という部分に着目。「個別案件についてはコメントせず」というこれまでの姿勢を突き崩すことができたのは「市民ムーブメントの成果」と評価する。
■依然として邦銀3行「化石燃料ファイナンス」ワースト10入り
3メガバンクはEACOPへの関与を否定したものの、化石燃料全般への資金提供を止めたわけではない。中にはインドネシア・チレボン石炭火力発電所(5月25日記事)のように、現地住民から強く中止を求める声が上がるプロジェクトもある。
米環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワークなどが4月に発表した「化石燃料ファイナンス報告書2023」によると、2022年の化石燃料企業への資金提供額の世界上位10行の中に3メガバンクが名を連ねた。
5月にアフリカを歴訪した岸田文雄首相がモザンビークのLNG(液化天然ガス)プロジェクトへの支援を表明するなど、これからも化石燃料へ日本の資金が流れる恐れがある。1.5℃目標の達成には一刻の猶予もなく、脱化石の潮流に逆流することは許されない。
6月末の3メガバンクの株主総会では、脱炭素移行計画の策定・開示に関する株主提案が決議される。環境NGOや市民は化石燃料プロジェクトからの撤退を求め、引き続き対話を続ける意向だ。