記事のポイント
- 事業と生物多様性など「自然資本」との関係性を開示する企業が増えてきた
- 「自然資本」とは植物、動物、空気、水などの天然資源を指す
- キリン、SMBC、花王、KDDIなどがTNFDに対応した情報開示を行う
事業と生物多様性など「自然資本」との関係性を開示する企業がじわり増えてきた。自然関連リスクに関する情報開示フレームワークを提供するTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)は3月末に最終の草稿版を公開した。事業者から意見を集め、9月に第一版を発行する。(オルタナS編集長=池田 真隆)
KDDIは6月9日、国内通信事業者として初めて自然資本関連リスクをまとめたTNFDレポートを発行した。同社の山下 和保・コーポレート統括本部サステナビリティ経営推進本部長は、5月末に開いた記者会見で、「自然資本と事業の関係性を対外的に開示することは使命だと考えている」と強調した。
「自然資本」とは植物、動物、空気、水などの天然資源を指す。社会経済を支える資本の一つで、経済的価値は年間で世界のGDPの半分以上となる44兆米ドルに及ぶ。
同レポートでは、KDDIの事業が及ぼす生物多様性への依存度と影響、リスクと機会を整理した。同社にとって自然資本に関する主なリスクは、基地局建設や通信ケーブル設置による「土地改変」だ。
土地改変とは、土地の掘削や土壌の採取、開墾などを指す。リスクを減らすため、自然環境に配慮した通信設備の設置などを行う。
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一方で、通信設備を設置することができなかった山間部などでの通信環境の整備に取り組むことを「機会」とした。データ収集などに活用できるIoT技術、地域共創、環境課題の解決に貢献する技術を多く保有することも強調した。
水上ドローンを活用した藻場調査、ブルーカーボン自動計測システムなどだ。生物多様性の保全と経済成長の両立を図るITベンチャー企業バイオーム(京都府京都市)にも出資し、パートナーとともに課題解決に挑む。
同社では自然資本関連リスクなどの調査を行っており、TNFDが3月末に最終の草稿版を公開したタイミングで情報開示に踏み切った。
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