記事のポイント
- 「LGBT理解増進法案」が15日の参院内閣委で審議入りする
- その前夜、LGBTQ当事者や支援者らが抗議集会を開いた
- 850人が集まり、「法案は差別を助長しかねない」と訴えた
与党案に修正を加えた「LGBT理解増進法案」の参議院内閣委員会での審議入りを前に、6月14日夜、LGBTQ当事者や支援者らが抗議集会を開いた。参議院議員会館前に850人が集まり、「法案は差別を助長しかねない」と訴えた。(オルタナ副編集長=吉田広子)
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LGBT理解増進法案は6月13日に衆議院を通過し、15日の参議院内閣員会で審議される予定だ。与党は16日、参議院本会議での成立を狙う。
今国会では、与党修正案(自民・公明)、維新国民独自案(維新・国民)、超党派合意案(立憲・社民・共産)の3案が提出されていた。9日の衆院内閣委では、維新と国民の提案を受け入れた修正与党案が可決された。立憲民主、共産、社民の3党案は否決されたほか、付帯決議の採択は認められなかった。
LGBTQ当事者や支援者らは、修正が加えられるたびに後退する法案に対し、「理解増進ではなく、理解を『阻害』しかねない」として、抗議している。主な修正点は次の通りだ。
1)「差別は許されない」から「不当な差別はあってはならない」に修正
2)「家庭及び地域住民その他の関係者の協力を得つつ」という文言の追加
3)「すべての国民が安心して生活することができるよう留意する指針の策定」を新設(第12条)
4)「民間の団体等の自発的な活動の促進」の削除
5)「性同一性」から「ジェンダーアイデンティティ」に変更
■ 理解増進法案で「規制」する思惑か
特に問題視されているのが、新たに加わった第12条だ。
「第十二条 この法律に定める措置の実施等に当たっては、性的指向又はジェンダーアイデンティティにかかわらず、全ての国民が安心して生活することができることとなるよう、留意するものとする。この場合において、政府は、その運用に必要な指針を策定するものとする」
一見問題がなさそうに見えるが、LGBT法連合会は、「実質的に多数派に配慮する規定として機能する」と批判した。同会は、「与党議員のブログで、当初の理解増進法与党案を使って『自治体の先進的条例を制限する抑止力とする』と表明されていた」と指摘。「ほかの与党議員も理解増進法の4党修正案を使い、『先進的な教育実践を規制するためにこの法案を使う』と表明している」と主張した。
同会は「当事者の差別や困難をなくす取り組み自体を 『規制』する動きに対して、正統性や法的根拠を与えるものとなる。これは断じて看過することはできない。このまま可決されることは、決して許されない」と強調した。
集会に参加した、TRANSGENDER JAPAN共同代表の畑野とまとさんは、「6月はプライド月間。その『プライド』は、差別から生まれた。米国では、『ブラック・イズ・ビューティフル』という運動があるが、決して自分たちを卑下していない。もし法案が通ったとしても、私たちが連帯すれば世の中は変わる。クィアパワーを信じている。世の中を変えていきましょう」と呼びかけた。