記事のポイント
- 金融庁は脱炭素に向け投融資判断に削減貢献量などの活用を促す
- 多排出産業などのトランジションに向けては金融機関の役割は大きい
- 一時的なスコープ3の増加よりも全体像を評価して判断することを求める
金融庁は脱炭素に向けた投融資の判断に金融機関のスコープ3であるファイナンスド・エミッションの増減だけでなく、削減貢献量などの併用を促す。GHG多排出産業のトランジションをはじめとして、脱炭素化に向けては金融機関の役割は大きい。金融機関はトランジション・ファイナンスとしての資金を供給することで、一時的に自らのスコープ3を増大させる可能性がある。金融庁では一時的なスコープ3の多寡ではなく、全体像を評価して判断することを求める。(オルタナ編集部・萩原 哲郎)

金融庁はこのほど、「脱炭素に向けた金融機関等の取組みに関する検討会報告書」を公表した。脱炭素への移行(トランジション)に向けた金融機関の取り組みの現状や課題、今後の方向性などを示した。
政府はGX(グリーン・トランスフォーメーション)に向けて、官民併せて150兆円規模の「GX投資」を集めようとしている。メガバンクのひとつ、みずほフィナンシャルグループは19年度から30年度までのサステナブルファイナンスの実行目標を25兆円から100兆円に引き上げた。
報告書ではこういった流れから、「従来からの社会的責任投資やESG投資といった枠組みに止まらない役割が、脱炭素社会の実現に向けて金融機関には期待されている」とする。
■金融機関は自身のスコープ3増大の懸念も
一方で、金融機関にとってGHG多排出産業へトランジション・ファイナンスを実行することは、金融機関自らのスコープ3を一時的に増大させる。
スコープ3カテゴリ15(投資)は投資先企業のスコープ1、2の排出量を投資割合に応じて算定する。「ファイナンスド・エミッション」とも呼ばれ、これをいかに減らしていくかが金融機関の課題となっている。
COP27で設立されたGFANZ(グラスゴー金融同盟)を構成する国際イニシアティブ、NZBA(ネットゼロを目指すグローバルな金融機関の有志連合)は50年までにファイナンスド・エミッションのネットゼロを目標に据える。
ただファイナンスド・エミッションの増減だけを追うと、多排出産業のトランジションに必要な資金の供給が滞る懸念がある。
■「削減貢献量」など多様な指標の活用を勧める
■企業も「削減貢献量」開示を積極化
■金融業界は議論の行方を注視