漁獲量を減らして利益を上げる、持続可能なミズダコ漁とは

記事のポイント


  1. 魚の獲りすぎによる水産物の減少が世界的に問題になっている
  2. 北海道苫前町の漁師が海の資源量を維持するため、自主的漁獲ルールを定めた
  3. 消費者に直接販売する仕組みも立ち上げ、利益率を高める

魚の獲りすぎによる水産物の減少が世界的に問題になっている。令和4年度水産白書によると、日本でも、75%以上の魚が「獲りすぎ」「限界ぎりぎり」だと評価されている。北海道苫前町でミズダコ漁を営む小笠原宏一さんは、資源量を維持するための自主的な漁獲管理ルールを定めた。消費者に直接販売する仕組みも立ち上げ、利益率を高める。(オルタナ編集部・下村つぐみ)

ミズダコ漁師で、「inaka BLUE」の代表である小笠原宏一氏

北海道苫前町は北海道の北西に位置し、漁業などの一次産業が町の主幹産業となっている。特にミズダコの漁獲が有名だ。一方で、過疎化が進み、漁業者数の減少が危惧されている。15年後には、苫前町の人口は41%にまで減少する見込みだ。

そんな中、地域の活性化やミズダコの資源管理に取り組むのが小笠原宏一さんだ。小笠原さんは18歳から地元の苫前町で漁業を行っている。伝統的なミズダコの樽流し漁を後世に引き継いでいくために始めたFIT(漁業改善プロジェクト)をきっかけに、地域の漁村や漁業の持続可能性を高める活動に従事してきた。

北海道の資源管理方針では、2.5㎏未満のタコは放流するといった既存のルールがある。このルールに加え、小笠原さんは専門家との協議のうえ、ミズダコの資源量を把握するためにミズダコの漁獲数を記録するといった自主的なルールを設ける。

漁具数制限も引き上げた。漁具数は北海道の北もるい漁協で定められているものよりも常に5つ少ない15個に設定し、ミズダコの漁獲量が一定の基準値を下回った場合には12個にまで減らしている。同様のルールでミズダコを漁獲する漁師は30人いるという。

2021年に設立した「inaka BLUE」では、漁師から直接ミズダコを販売する仕組み「ReTAKO」を始めた。海の状況やミズダコの資源量に従って、小笠原さんなどの漁師自らが出荷する。

漁協を介さないことで、漁業者が価格決定権を持ち、より高い値段で売って利益を上げることができる。これにより、ミズダコの資源を守るために漁獲量を減らさなければならない場合でも、漁師の収入を維持できる。実際に小笠原さんの収入も、通常よりかは上がっているという。

消費者に直接海の資源を守っている感覚を持ってもらうために、「ReTAKO」で売り上げた重量分だけ、10㎏未満のタコを海にリリースすることを消費者と約束している。

小笠原さんは、「ミズダコは広い範囲に分布しているため、自分たちの活動だけでは、実際の数が把握できない。多くの漁業者に声かけを行い、参加してもらうためには、行政やその他団体、企業の協力が必要だ」と話した。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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キーワード: #生物多様性

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