モビリティトピックス: ル・マン、30年に100%水素化へ

雑誌オルタナ73号(6月30日発売)のモビリティトピックスを紹介します。(島下泰久)

液体水素で24時間耐久レース

液体水素を燃料として搭載した水素 エンジンカローラ

5月28─29日に開催された富士24時間耐久レースに、トヨタが燃料に液体水素を使う内燃エンジンを搭載したGRカローラのレース仕様で参戦した。一昨年、昨年には気体高圧水素を使っていたが、液体水素はエネルギー密度が圧倒的に高く、航続距離の伸長が可能。

実際、今回も1回の充填での航続距離は3割増となった。一方、水素の液化にはマイナス253℃という超低温が必要なのがカギとなる。水素には燃料電池に使う途もあるが、内燃エンジンなら既存のディーゼルエンジン車からの改造が容易であり、大型商用車などでは、低コストでのカーボンニュートラル化の可能性が開ける。つまりこれは技術開発の一環なのである。


ル・マン、30年に100%水素化へ

ル・マン24時間レースの主催団体であるACO(フランス西部自動車クラブ)のピエール・フィヨン会長が富士24時間レースの会場を訪れ、ル・マンの将来について記者会見を行なった。

そこで明らかにしたのは、まず2026年からの水素エンジン車の参加を可能にするということ。元々、燃料電池を搭載する車両区分が出来ることになっていたが、新たに水素エンジンクラスも加わることになる。

更に、2030年には最高峰カテゴリーの100%水素化を目指すと宣言した。トヨタの佐藤恒治社長は「非常に前向きに受け止めています」とコメント。まさにトヨタが出ないでどうするというカテゴリーの今後に期待が高まる。


電動車ならでは容易に性能アップ

トヨタの量販電気自動車であるb Z 4 X(ビーズィーフォーエックス)がアップデートを行なった。急速充電を繰り返すと充電速度が低下する、メーター上の航続可能距離が実態と乖離している、残り航続距離よりバッテリー残量の%表示が欲しいなどの声に応えたかたちだ。

また先日、アウディジャパンは2020年に導入した電気自動車、e-tron(イートロン)シリーズ3モデルに、標準の50kWから一気に150kWの急速充電まで対応するレトロフィットキットを提供する。費用は無料である。電動化時代はこうやってソフトウェアで簡単に車両のアップグレードが実現できる。

電気自動車は中古車価格の下落が大きいと言われるが、これらは残存価値向上にも貢献するだろう。


いすゞとホンダ、FC大型トラック開発へ

いすゞ自動車は2027年を目処に燃料電池(FC)大型トラックの市場導入を予定している。燃料電池システム開発のパートナーにホンダを選んだ。

大型トラックのカーボンニュートラル化に挑む

水素を化学反応させて電気を取り出す燃料電池は車両からCO2排出量がゼロであり、更にバッテリー電気自動車が容量によって数時間の充電を必要とするのに対して、現在のディーゼルエンジン車と変わらない10分程度の充填時間で済むため、ダウンタイムが抑えられるというメリットを持つのだ。

実は燃料電池小型トラックについては、いすゞはトヨタ、日野とともにC J P T(コマーシャル ジャパン パートナーシップ テクノロジーズ)で企画、開発を推進している。トヨタ、ホンダという燃料電池自動車の二大巨頭、両方と組むという戦略を採ったわけだ。

キーワード: #雑誌オルタナ73号

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