海の課題をビジネスで解決する「ブルーオーシャン・イニシアチブ」

記事のポイント


  1. 「ブルーオーシャン・イニシアチブ」が会合を開き、持続可能な水産業について議論した
  2. 世界の漁獲量のうち3割をIUU漁業が占めるなど、漁業の課題は多い
  3. 東北の若手漁師集団は、漁業のイメージを変えるため、独自の取り組みを進める

海の課題をビジネスで解決する企業連合「ブルーオーシャン・イニシアチブ」(BOI、東京・港)は7月14日、第4回会合を開いた。シーフードレガシー(東京・港)の花岡和佳男CEOと、フィッシャーマン・ジャパン・マーケティング(宮城県石巻市)の津田祐樹社長がそれぞれ講演し、参加者も交えて持続可能な水産業について議論した。(オルタナ副編集長=吉田広子)

フィッシャーマン・ジャパンは、水産業のイメージを変える写真素材も販売している。写真はストックフォト「PIXTA」で販売されている「宮城県石巻市の漁師が定置網漁に出て働く様子」
フィッシャーマン・ジャパンは、水産業のイメージを変える写真素材も販売している。写真はストックフォト「PIXTA」で販売されている「宮城県石巻市の漁師が定置網漁に出て働く様子」

■世界の漁獲量のうち3割はIUU漁業

「農業や林業と違って、漁業は野生生物である魚を獲っている。魚は自然界で産卵・生育し、人の手をかけずに自然に増殖する。きちんと水産資源を管理して、海洋生態系を回復できれば、水産業は持続可能性を取り戻すことができるはず」

こう話すのは、水産物の持続可能な調達を推進するシーフードレガシーの花岡CEOだ。

サステナX

国際連合食糧農業機関(FAO)によると、世界の水産資源の3分の1が獲りすぎの状態にあり、資源量は減少している。さらに、人身売買や奴隷労働といった漁業の人権侵害も問題視されている。

世界の漁獲量のうち3割をIUU(違法・無報告・無規制)漁業が占めると推定される。

花岡CEOは「日本の漁獲量はピークの3分の1に減少したが、日本は世界最大の水産業拠点であり、日本が果たす役割は大きい」と話す。

「資源管理で成功している国と日本の違いは、ステークホルダーの多さ。日本の場合、さまざまな関係者がいて、合意形成が難しい。漁業の社会だけではなく、日本全体でどうルールをつくっていくかが問われている」(花岡CEO)

シーフードレガシーは、水産物の持続可能な調達方針の策定や流通・販売戦略立案の支援、政策提言を行う。花岡CEOは「ネイチャー・ポジティブ水産業『サステナブル・ブルーシーフードシステム』を実践していきたい」と話した。

■報酬は「魚払い」、漁業の副業を推進

「三陸から日本の水産業を『新3K』(かっこいい、稼げる、革新的)産業に変える」。こうビジョンを掲げるフィッシャーマン・ジャパンは、東北の若手漁師集団だ。東日本大震災を機に、2013年に設立した。

ヤフーが復興支援の一環で石巻市に拠点を置き、水産業に携わる人たちをつないだことがきっかけになった。フィッシャーマン・ジャパン・マーケティングの津田社長は、石巻市にある創業40年の鮮魚店の2代目でもある。

「漁師は、狩猟的な仕事なので、ライバル意識も強く、個人で動くことが多い。横のつながりはほとんどない。しかし、水産業が衰退していくことにみんな危機感を覚えていた。震災を機に、チームとなって水産業の活性化に取り組み始めた」(津田社長)

フィッシャーマン・ジャパンの取り組みは、どれもユニークだ。例えば、2017年に手掛けた漁師によるモーニングコールサービス「フィッシャーマンコール」は大きな話題になった。早朝から海で働く漁師たちが、朝が苦手な若者を電話で起こす。

2019年に始めた副業・兼業マッチング企画「GYOSOMON(ギョソモン)」も好評だ。報酬は「魚払い」で、水産業にかかわりたい人と水産事業者をつなぐ。

フィッシャーマン・ジャパンの活動は、海外にも広がり、最近では、タンザニアの海産物を隣国ウガンダまで流通させる「コールドチェーン」の構築を支援している。

「ブルーオーシャン・イニシアチブ」(BOI)は、今後も定期的に会合を開き、海の課題を解決するビジネスについて議論を重ねていく。

yoshida

吉田 広子(オルタナ輪番編集長)

大学卒業後、米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。日本に帰国後の2007年10月、株式会社オルタナ入社。2011年~副編集長。2025年4月から現職。執筆記事一覧

執筆記事一覧
キーワード: #漁業

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。