記事のポイント
- スープストックトーキョーの運営店舗が未利用魚を活用したメニューを提供する
- 魚はクラダシがフードロスの協定を締結する和歌山県すさみ町から仕入れる
- 未利用魚に新たな価値を付けて販売し、町の漁業振興への貢献を目指す
スープストックトーキョー(東京・目黒)が運営するファミリーレストラン「100本のスプーン」は、10月から未利用魚を活用したメニューを提供する。クラダシ(東京・品川)が連携協定を締結する和歌山県すさみ町からシイラなどの未利用魚を仕入れ、新たな価値を付けて販売することで、同町の漁業振興への貢献を目指す。(オルタナ副編集長・長濱慎)

■先行販売では注文が通常メニューの3倍に
メニューはシイラをムニエルやフライにした3種類で、10月2日から首都圏にある「100本のスプーン」全5店舗で提供する。シイラは良質な白身魚であるにもかかわらず、個性の強い見た目から市場では敬遠されてきた。
和歌山県すさみ町は紀伊半島のほぼ南端に位置し、伝統なカツオ漁「ケンケン漁」で知られる。夏は回遊するカツオを追うシイラも獲れるが、ほとんど価値が付かず地元の道の駅に「雑魚」として並べるか、廃棄するかしかなかった。
今回の取り組みは未利用魚に新たな価値を付け、漁師の収入安定につなげることで持続可能な地域漁業への貢献を目指す。8月7日から都内2店舗(二子玉川、豊洲)で先行販売を行ったところ、注文量が通常メニューの3倍にのぼったという。
100本のスプーンの高橋徹也・総料理長は「すさみ町や未利用魚について解説したメニュー表を店頭に置いている。こうして食材にまつわるストーリーを伝えたことが、エシカル意識が高いお客さまの注目を集め、注文につながったのではないか」と話す。

■「フードロス削減」と地方創生を切り口に連携
クラダシは「日本で最もフードロスを削減する会社」をビジョンに掲げる。メインの事業はオンラインストアの運営で、賞味期限が近づいたり規格外になったりした食品をメーカーから仕入れて販売し、収益の一部を社会貢献活動に寄付する。
クラダシは全国30近くの自治体と連携協定を結び、フードロス削減を通した地域活性化にも取り組んでいる。すさみ町も協定先のひとつで、インターンの大学生の漁業体験などを通して2022年から交流を行ってきた。
一方のスープストックトーキョーは、規格外品として廃棄される食材を活用したメニュー開発などを通してフードロス削減に取り組んでおり、クラダシとの協働が実現した。
クラダシ広報IRグループの小平佳鈴さんは「引き続きさまざまな自治体と漁業や農業で連携し『もったいないをおいしく食べる』取り組みを広げたい」と今後への展望を語る。