手紙の現物を預かることは保険業法で禁じられているため、同社は担当省庁と相談してデータで預かることにした。データなら適法であることは、2007年に金融庁の「ノーアクションレター制度(法令解釈に係る照会手続き)」を利用して確認を取った。その書面は同社ホームページで公開している。
同サービスは、生命保険の契約者の手紙や写真を、保険の満期まで無料で預かる。契約者が亡くなった場合はデータのロックを解除して、保険金の受取人がウェブサイトで証券番号や暗号、パスワードなどを入力すれば閲覧できるようにする。
預かるファイルの形式は「1200字以内のテキストファイル」「手書きの手紙などをスキャンした10メガバイト以下のPDFファイル」「10メガバイト以下の画像ファイル」の3種類。契約者は各種1点ずつ、最大で3つのデータを保険会社に託せる。
一例として、いつも持ち歩いている家族写真に、その写真を大切にしている理由や家族への思いをしたためた手紙を添えて残すことができる。ファイルは、契約期間中なら何度でもオンラインで追加や変更、削除が可能だ。
棚田信子代表取締役は「故人の手紙は、残された方の生きる道しるべにもなる。死亡情報を逐一入手できる立場にある保険会社なら、故人の温かい思いをいち早く伝えられると思った」と、約7年前の着想を振り返る。
「法的効力を持つ事務的な『遺言』や身辺整理の意味合いが強い『エンディングノート』とはまた違って、純粋な思いだけを残せる」ツールとして、普及を目指す。
同社は、国内初の同サービスを生命保険の標準的な付帯サービスにしようと、保険会社各社や代理店に採用を呼び掛けている。(オルタナ編集委員=瀬戸内千代)