雑誌オルタナ74号(2023年9月28日発行)の「モビリティトピックス」を紹介します。
■BMW、日本でFCEVを実証へ
BMWが日本で燃料電池自動車(FCEV)の実証実験を行なう。用いられるのは燃料電池実験車両「iX5 Hydrogen」だ。
トヨタとFCEVの基礎研究を共同で行なっているBMWグループは、2020年代後半にはその市場投入を予定している。そのため、すでにドイツや米国で実証実験を実施しており、日本でも様々なデータを取得すると共に、官公庁や行政機関、大学などで専門家の視点からのフィードバックを得て、開発に役立てるという。
iX5 Hydrogenが特徴的なのは大容量の駆動用バッテリーを搭載すること。水素充填環境が無くても相当な距離をBEVとして走行できる。日本の道路環境での評価は興味深いところだ。
■テスラの充電規格、欧州にも
ボルボ カーズは6月27日に北米地域でテスラが展開する超急速充電器「スーパーチャージャー」を使用できるよう合意したと発表した。2024年上半期から販売される車両にはテスラのNACS規格の充電ポートが標準装備になる。

数多くの充電ステーション数を誇るテスラは昨年11月にその仕様を公開。NACSとして標準規格化を目指すとしており、すでにGM、フォード、リヴィアンなどが対応を表明していたが、欧州メーカーではボルボが初となった。更に続いてフォルクスワーゲン、メルセデス・ベンツ、日産などもNACS対応を発表。勢力図が一変したかたちだ。
■EV充電網競争、本格化へ
テスラの充電規格NACS採用メーカーが急増する中、それに待ったをかける動きも。BMW、ホンダ、GM、更にはヒョンデ、キア、ステランティス、メルセデス・ベンツの7社は充電網整備のための合弁会社を立ち上げ、2024年夏から米国、カナダで急速充電器の接地、そして運用を行なうと発表した。
充電網を自ら整備したテスラに対して、既存自動車メーカーはこれをインフラ会社に任せていたが、この方針を改めたかたちである。自前の充電器ならば車両の豊富なデータにアクセスでき、その活用により一層のビジネスチャンスが生まれる。このままでは、それをみすみすライバルに渡してしまうという危機感がこの動きに繋がったに違いない。
■トヨタ、専任組織でBEVに本腰
トヨタのバッテリーEV専任組織「BEVファクトリー」は、クルマ・モノづくり・仕事の変革を通じてBEVで未来を変えると謳う。そのBEVの将来像は刺激的だ。

登場するBEVは次世代電池の採用、音速技術の採用などで航続距離1千kmを実現する。かっこいいデザイン、フルOTAによるカスタマイズにもこだわる。車体はバッテリーを積む中央、そして前後の3モジュール構造として、更にギガキャストも採用。開発費、工場投資の削減を狙う。
2030年には年間350万台のBEV販売を計画しているトヨタ。その約半数がBEVファクトリーから生まれることになる。もはやBEVに消極的なトヨタなどとは誰も言えなくなった。